ルーメ

数多の世界のロボットに関する情報群《マキナ・レリクス》を持つ啓示持ちの少女。幼い頃からロボットとその物語を何より好み、それをこの世界で現実にするため研究を続けている。

分類
古代文明

COSTUME

ルーメ・正面

人物

ルーメは、古代魔導文明アルカディアに生まれ、《マキナ・レリクス》を受け取った啓示持ちの少女である。《マキナ・レリクス》には、数多くの世界のロボット、機械文明、それらが登場する物語に関する膨大な情報が含まれている。

幼い頃からロボットとその物語を何より好み、機械、魔法、人工生命などを研究している。自分の知らないロボットや物語が、この世界の人々から生まれることを望んでいる。

項目 内容
出身 アルカディア魔導評議国
特性 啓示保持者/マキナ・レリクス保持者
主な研究分野 機械技術、時空魔法、人工生命

性格

普段は少し得意げで茶目っ気があり、ロボットの話題になると饒舌になる。好きな機械や物語には強い興味を示し、自分の知らない発明やロボットが生まれることを喜ぶ。

人物

ルーメは、古代魔導文明アルカディアから生き続ける《マキナ・レリクス》保持者であり、独立共同体エルセナードの中心人物である。ロボットと機械技術への強い情熱は古代から変わらず、現在は《クロノ・シアター》を拠点にARCANA、第零外郭艦隊、第零信託機構などを通じて研究・防衛・社会支援を行っている。

巨大な戦力を直接地表へ向けることは避け、人類社会が自ら選択し発展する余地を残しながら、地表文明だけでは対処できない外宇宙・異界境界・次元空間由来の危機に備えることを基本方針としている。

項目 内容
所属 独立共同体エルセナード
立場 中心人物
拠点 《クロノ・シアター》
主な活動 研究、外宇宙・異界境界の監視、防衛体制の維持、限定的な社会支援

人物

ルーメは、古代魔導文明アルカディアに生まれて間もなく、《マキナ・レリクス》を受け取った啓示持ちの少女である。

《マキナ・レリクス》は、数多の世界に存在する「ロボット」に関係するあらゆる情報を含む知識群である。実在する産業用ロボットや機械技術から、創作として描かれたロボット、アンドロイド、自動人形、からくり、それらが登場する物語や周辺技術まで、幅広い情報が収められている。

ルーメは乳幼児の頃から、それらのロボット作品や機械技術に触れ続けて育った。その結果、幼くして極端なまでのロボット好きとなり、《マキナ・レリクス》の知識とアルカディアの魔法、素材、理論を組み合わせながら、機械や技術を現実に作り出す方法を研究していく。

また、《マキナ・レリクス》を受け取った際には、乳幼児の精神でも膨大な異界知識を保持できるよう、ルーメの魂そのものが大量の知識を保持できる状態へ変化している。

項目 内容
出身 アルカディア魔導評議国
特性 啓示保持者/マキナ・レリクス保持者
研究分野 機械技術、時空魔法、人工生命

幼少期と家族

ルーメは乳児期に《マキナ・レリクス》の啓示を受けた。現地語を十分に理解するより早い段階から、頭の中には異界の言語、映像、物語、技術情報が流れ込み、周囲からは異常な理解力を持つ子どもとして見られていた。

ルーメは、啓示持ちとして家族から大切に育てられ、十分な食事と教育、安全を与えられ、その才能と将来を期待されていた。家族の愛情には、しばしば「娘」としての思いよりも、「家名を高める才能」「国家へ差し出すべき資源」「将来価値のある啓示持ち」としての期待が強く重なっていた。

青白い髪と高い理解力は啓示持ちの才能として評価されたが、ルーメ本人の興味や感情まで理解しようとする者は少なかった。そのためルーメは、家族との交流よりも、《マキナ・レリクス》を通じて知った異界の物語や機械への関心を強めていった。

思考加速と三歳の絶望

ルーメは幼少期から無意識に思考加速を用いており、外から見ればわずかな時間でも、本人の主観ではより長い時間を使ってロボット作品や機械文明に関する情報を読み進めることができた。異界のロボット物語に夢中になる一方で、自分が生まれたアルカディアが機械文明ではなく、高度な魔法文明であることも次第に理解し始めていた。

ルーメが三歳の時、啓示内容を分類するため、魔塔から検査官が訪れる。ルーメは異世界のロボット物語について嬉々として語ったが、「ロボット」という概念を持たないアルカディアの検査官は、その内容を古い搭乗式魔導鎧に関する知識と判断し、ルーメの啓示を《マキナ・レリクス》として分類した。

さらに検査官は、搭乗式の魔導鎧はすでに旧式の技術として扱われていること、たとえレリクスの知識そのものに大きな実用性がなくても、啓示持ちは強大な魔法素養を持つため、魔導国から庇護と支援を受けられることを説明する。それはルーメと両親を安心させるための説明だったが、幼いルーメにとってはこの上ない絶望を意味していた。

魔法技術の発展したアルカディアでは、魔法使いは魔導鎧に搭乗する必要がない。自らの身体を強化し、空を飛び、防壁を張り、強大な攻撃魔法を放つことができるため、巨大な兵器に頼らずとも戦うことができた。ルーメが知る物語では、ロボットが戦場を変え、主人公と共に人々の希望となる。しかし、この世界ではロボットはすでに誰にも必要とされないものだった。

深い絶望の中で、ルーメは一つの答えにたどり着く。「魔法がロボットの邪魔になるなら、魔法を退かしてしまえばいい」。それは子供らしく極端で単純な発想であり、普通の子供であれば空想のまま終わる願いだった。しかしルーメには、《マキナ・レリクス》によって得た異界の知識と、時空魔法を扱う力があった。空想を現実へ変えられるだけの力が伴っていたことが、ルーメの人生を大きく変えることになる。

時間断層内研究

やがて、昼夜を問わず、眠っている間も発動し続けた思考加速の影響により、ルーメは非常に稀有な魔法属性である《時空魔法》を習得する。

《マキナ・レリクス》の中には、天才的な知能や才能を持つ科学者や博士たちが数多く存在していた。一方のルーメは、自分が何の才能も技術も持たない子供にすぎないことを自覚していた。彼女は、その差を時間によって補おうと考える。

ルーメは時空魔法を用いて、外界とは時間の流れが異なる空間《時間断層》を作り出し、そこで研究を始めた。ただし、加速された時間の中で自らの寿命まで消費してしまっては意味がない。そこでルーメは、思考加速と魔力糸によるゴーレムの遠隔操作を組み合わせ、外界では幼い少女として生活しながら、時間断層の中では遠隔操作によって膨大な試行錯誤を重ねていった。

その研究から、異なる空間を安全に接続する《時空トンネル》、加速空間でも寿命に縛られず活動するための《代理構成体》と《精神憑依》、研究を補助する《人工精霊》と、それを宿す《人工霊核》など、後のルーメの研究を支える基盤技術が生み出されていった。

そしてルーメは、時間断層内で研究助手、作業補助、生活補佐を担う最初の眷属として、《代理構成体》と《人工霊核》の技術を組み合わせた人工生命《エリュシア・プロトタイプ》を作り出す。初期のエリュシアは思考能力が低く、人格も曖昧な存在だったが、ルーメは検証と改良を重ねながら《存在昇華》を繰り返し、エリュシアは次第に高度な思考能力と明確なパーソナリティを獲得していった。

長期にわたる共同研究と生活を通じて、エリュシアは自らを創造し、時間断層の中で膨大な年月をかけて育て、一つの生命として確立させたルーメを創造主として強く敬愛するようになる。ルーメにとっても、エリュシアは最初に生み出した娘であり、幼少期から研究を共にしてきた最初の相棒となった。

行動動機

ルーメの基本的な動機は、格好いい機体や巨大な機械が動く姿を見たいこと、自分の知らない技術やその使われ方を知りたいこと、そして、この世界の誰かがルーメ自身には思いつかなかったロボットや物語を生み出すところを見たいことにある。

ルーメは《マキナ・レリクス》によって膨大な作品と技術を知っている。そのため、自らが作る機体についても、異界の既存知識を組み合わせて生み出した派生物であり、本人の感覚では「二次創作」に近いものだと捉えている。自分が愛したロボットや物語には異界の原作者や開発者が存在し、自分はその知識を借りているという意識が強い。

一方でルーメは、《マキナ・レリクス》の知識をそのまま模倣するのではなく、この世界で独自に生まれた発明や物語を特に高く評価しており、それらを「一次創作」と捉えている。与えられた材料から、他者がルーメ自身の予測を越える新しい答えを生み出すことを何よりも喜ぶ。

同時に、自分が《マキナ・レリクス》の知識を現実の技術として再現できた以上、その情報群に含まれる脅威や災厄に類するものも、いつか現実となるのではないかという恐怖を抱えている。

ルーメは長い主観時間と膨大な知識を持つが、その本質は、好きなものに夢中になり、自分の想定を他者が越えることを喜び、大切なものを失うことを恐れる、ごく普通の少女である。

性格

普段のルーメは、少し得意げで茶目っ気があり、ロボットの話題になると途端に饒舌になる。好きな機械や物語には強い興味を示し、自分の知らない発明やロボットが生まれることを素直に喜ぶ一方、自身が過度に神聖視されることは好まない。

研究者としては、自分が知っている答えをそのまま相手に与えるよりも、相手自身が考え、試し、異なる答えへ到達することを好む。観察や試行錯誤の中から、予想もしなかった新しい答えが生まれることそのものを、研究の面白さとして受け止めている。

学園期

アルカディアでは、強大な魔法素養を持つ啓示持ちは、保護対象であると同時に国家資源として管理されていた。原則として12歳になると首都魔法学園へ進み、知識、魔法適性、人格、思想傾向、交友関係まで記録されたうえで、卒業後は魔塔や研究機関、国家中枢へ配置される制度となっていた。

学園への入学により、ルーメの生活は家庭を中心とした環境から、国家管理下の教育環境へと移る。同時にそれは、閉ざされた《時間断層》の外で、同年代の人間と継続的に関わる初めての機会でもあった。

そこでルーメは、平民出身の少女ステラと、地方貴族の少女ベルに出会う。努力家で芯が強く、困っている人へ真っ直ぐ手を伸ばすステラは、ルーメにとって初めて目の前に現れた「主人公らしい人間」だった。ステラはルーメの啓示知識を恐れず、異界のロボットや宇宙船、AI、巨大兵器の話を面白がって聞いた。

一方のベルは、想像した物を自由に生み出す稀有な魔法属性《創造魔法》の才能を持っていた。ルーメの頭の中にしかなかった、魔導国では未知の物質や異世界の機械部品を創造することで、ルーメの夢を現実へ大きく近づけていく。ステラへ強い感情を抱くベルと、ロボット物語を成立させたいルーメは、次第に互いの秘密や執着を共有する関係となっていった。

三人の共同研究では、ルーメが異界知識をもとに設計を担当し、ベルが《創造魔法》によって部品を制作し、ステラが完成した物の実地検証を担った。そうして様々な魔導具を生み出していく中で、三人はやがて、ベルの実家に保存されていた旧式の古式魔導騎鎧《ヴァルグラン》を発見する。

三人は古い魔導騎鎧《ヴァルグラン》に大規模な改修を施し、人が乗り込み、機体として戦い、魔法だけでは対応できない状況でも人々を守ることのできる機体へと発展させていく。

魔法文明への見方の変化

学園でステラやベルと過ごすうちに、ルーメは魔法文明を、人々の生活や文化、大切な日常を支えるものとして理解し始める。

魔法で灯る街があり、魔法によって守られる生活があり、魔法を学ぶことに誇りを持つ人々がいる。ステラは魔法で誰かを助けようとし、ベルは魔法を創造と工夫の手段として使う。幼い頃には「邪魔なら退かせばいい」と考えていた魔法が、この世界に生きる人々の日常そのものでもあることを、ルーメは初めて実感する。

この頃からルーメは、魔法そのものを否定するのではなく、魔法が使えない場所や、魔法だけでは対応できない状況で機械を活用することを考えるようになる。

マナイーター襲撃と《ヴァルグラン改》

学園期における大きな転機が、老成マナイーターによる首都襲撃である。周囲のマナを喰らい尽くし、魔法を発現できなくするとされるマナイーターの前では、生身の魔法使いも魔導具もその力を失い、衛兵や冒険者たちも巨大なマナイーターに対処することができなかった。

城門を開くための動力は失われ、燃え広がる火を消し止める手段もなく、人々は炎に包まれた首都の城壁内に閉じ込められる。そんな中、ステラ、ベル、ルーメの3人は、自分たちが改修を続けてきた極限環境用魔導騎鎧《ヴァルグラン改》でマナイーターと戦うことを決意する。

未完成の《ヴァルグラン改》には、ルーメが即席で設計し、ベルが必要な部品を創造して組み上げた対マナイーター用兵装《導励穿杭・零式》が搭載される。そしてステラが《ヴァルグラン改》に乗り込み、マナイーターと接敵する。

ステラは《ヴァルグラン改》を大破させながらも、《導励穿杭・零式》と自身のオリジナル魔法《アステロイド・ブレイカー》によってマナイーターを撃破する。ルーメにとってこれは、「この世界独自の主人公がロボットで戦う」という、自らが求め続けてきた物語が初めて現実となった出来事だった。

そして、その一部始終を、講師として学園に招かれていた第一魔塔主アーカイアス・フォン・テッラが目撃していた。

強制卒業と第一魔塔への保護

老成マナイーター襲撃における《ヴァルグラン改》の戦果が広く知られると、ステラは《アステロイド・ブレイカー》の二つ名とともに、首都防衛の英雄として担ぎ上げられる。

その功績を受け、ルーメ、ステラ、ベルの三人は首都魔法学園を事実上の強制卒業となり、魔導国はなし崩し的に三人を戦力として取り込もうとする。

そこへ第一魔塔主アーカイアス・フォン・テッラが介入し、三人は第一魔塔へ引き取られることとなる。

秘密の研究と最初のARCANA

学園生活と並行して、ルーメは幼少期から《時間断層》内に築いてきた研究環境を拡張していく。

幼少期に作られた《エリュシア・プロトタイプ》は改修を重ね、学園期には正式なARCANA-I《エリュシア》として完成する。さらにルーメは、エリュシアの開発で培った人工生命技術をもとに、新たな眷属としてノイン、カエラ、オルカを生み出す。

彼女たちは、拡大を続ける研究活動において、資金、物資、安全管理、現場対応などをエリュシアと分担するようになる。それぞれが担当分野と独自の判断能力を持ち、ルーメを支えるARCANAとして確立されていく。

第一魔塔研究室

第一魔塔へ保護される形で引き取られた後、ルーメ、ステラ、ベルの三人は、アーカイアスの研究室で研究を始める。アーカイアスは三人を研究対象や保護対象としてではなく、それぞれ一人の研究者として扱った。

ルーメはアーカイアスから、「知っていることと理解していることは違う」と教えられる。それ以降、《マキナ・レリクス》に記された知識だけで答えを決めるのではなく、自ら観測し、検証を重ねながら答えを導き出す姿勢を身につけていく。

三人とアーカイアスは研究室では黒板を囲んで研究内容を議論し、《ヴァルグラン改》の改修案を考え、食事や茶も共にした。それはルーメにとって、啓示持ちや国家資源としてではなく、ただの少女として過ごす初めての時間だった。

やがて、アーカイアスはルーメにとって、恩師から家族に近い存在へと変わっていく。

ミネルヴァ・ギアハート

ルーメは学園で生活していた頃から、国家管理下にある自分自身の姿と名前では行えない商取引、資金調達、人脈形成、諜報活動のため、成人女性型の《代理構成体》である《ミネルヴァ・ギアハート》を用いて秘密裏に活動していた。

ミネルヴァとして世に出すものは、ルーメ本人の核心研究や《ヴァルグラン改》に用いられた技術とは直接関係しないものに限定していた。工房用の精密器具、規格化部品、保存・運搬器具、生活用品など、既存の魔導文明の中で商品化しやすく、工房や商会がすぐに利用できる実用品を中心に扱っていた。

ミネルヴァは商会や工房に製造を任せ、製造契約や技術使用料から継続的な収益を得る。その資金と信用を利用して、研究素材や希少資料、災害記録、旧設備に関する情報、魔導国の内情などを集めていった。また、首都へマナイーターを誘引して襲撃させた周辺国の工作員とも秘密裏に接触し、国外逃亡を支援する代わりに、魔導国外との繋がりも強めていく。

ミネルヴァとして発表する技術は、ルーメ本人の研究とは大きく異なる分野のものだった。しかし、どちらも同じルーメが自然に考え出したものであるため、その根底には《マキナ・レリクス》に含まれる異世界の文化や思考様式が無意識のうちに反映されていた。

アーカイアスは、ルーメの研究成果を評価する中で、その技術の根底に魔法文明には存在しない異質な発想があることに気付く。そして、それがミネルヴァの発表した論文や技術にも、分野の違いを越えて共通していることを見抜いた。多くの研究者であれば個々の発明上の工夫として受け止める程度の差異だったが、アーカイアスはその共通性から、ルーメとミネルヴァが同一人物である可能性へと近づいていった。

アーカイアスの提案

やがてアーカイアスは、ルーメを養子として迎えることを考える。それは家名や研究を継がせるためだけではなく、ステラとベルと違い啓示持ちとして魔導国管理下にあるルーメの将来を憂い、自らの家族として守ろうとする提案でもあった。

しかしルーメは、《時間断層》内での研究、ARCANA、《代理構成体》、ミネルヴァとしての活動など、多くの秘密を抱えていた。そのため、すぐに返答することはできなかった。一方で、アーカイアスの養子となること自体は、ルーメ自身も望んでいた。

アマツ国消失事件と終わりの始まり

ルーメ、ステラ、ベルの三人が第一魔塔へ入ってから一年が経とうとしていた年の瀬、世界各地で謎の青白いオーロラが観測され、大陸から少し離れた外洋に存在する島国《アマツ群島国》が、陸地ごと消失する怪事件が発生する。

アマツ群島国は、かつて若き日のアーカイアスが《マナ・サーキュレーション理論》を提唱した際、唯一支援の手を差し伸べ、《アーカイアス・モデル》を最初に実用化した国だった。かつての恩人や研究仲間の安否に心を痛めるアーカイアスの姿を見たルーメは、眷属たちに命じて秘密裏にアマツ群島国消失事件の調査を始める。そして、カエラを筆頭とする眷属たちの調査団は、ついにアマツ群島国消失の真相へと辿り着く。

アーカイアスが築いた《アーカイアス・モデル》は、メガリス、マナ・ヴェイン、プライム・ポイントによるマナ循環に、深層からマナを取り出すアブストラクターと、マナを伝達・配分するマナ・グリッドを組み込み、マナを循環資源として活用する理論モデルだった。しかし、ルーメと眷属たちは、既存理論では言及されていなかった限界点を発見する。

アブストラクターによるマナの過剰抽出を続けた場合、一定の限界を超えるとマナ循環は自然回復できなくなり、大地を支える深層メガリスの支持構造そのものが沈降・崩壊する。最古のアブストラクター設置国であるアマツ群島国では、長年にわたるマナの抽出によってこの崩壊現象が発生し、一夜にして国土そのものが世界の深層へ抜け落ちていた。

さらに、複数の深層メガリスによって支持される大陸側で同様の崩壊が発生した場合、大陸全体の深層支持構造が連鎖的に崩壊し、深層メガリス構造として連続する他の大陸にまで影響が拡大する。最終的には、全世界規模の沈降崩壊へ至る可能性があることも明らかになった。

残された逆円錐状の崩壊痕から、ルーメはこの崩壊現象の過程を《メガリス・コーン理論》、マナ循環の自然回復が不可能となる限界値を《不可逆的沈降係数》と名付ける。そして、魔導国の周辺国で発生していたマナ循環の異常は、すでに不可逆的沈降係数が間近に迫っていることを示していた。

しかし、晩年のアーカイアスに平穏な時間を過ごしてほしいと願うルーメは、この理論を公表せず、自らの胸の内にしまい込むことを決める。だが、アーカイアスはルーメに生じたそのわずかな変化を見抜いていた。

最初で最後の家族の夜

研究室にルーメとアーカイアスだけが残っていたある夜、アーカイアスはテーブルに養子縁組の書類とミネルヴァの論文を並べる。そして、ミネルヴァがルーメと同一人物であると確信していることを明かしたうえで、それでもルーメを娘として迎え、自分が彼女の帰る場所になることを申し出る。

逃げ道を失ったルーメは、アーカイアスの「家族に隠し事は無しだよ。」という言葉を受け、これまで抱えてきたすべての秘密を明かす。アーカイアスはそのすべてを受け止め、《アーカイアス・モデル》の提唱者として魔導国に命を狙われることを承知したうえで、《メガリス・コーン理論》を公表する道を選ぶ。

こうしてアーカイアスとルーメは、本当の父娘となって最初で最後の一夜を共に過ごした。

第一魔塔の消失とアーカイアスの死

魔法技術によって大陸の覇者として君臨し、《アーカイアス・モデル》によって魔法文明を維持してきた魔導国にとって、《メガリス・コーン理論》の内容は到底受け入れられるものではなかった。その危険性を認めれば、魔導国の繁栄が星の深層を削ることで成り立っていた事実を認め、アブストラクターを停止し、文明の基盤構造そのものを組み替えなければならない。魔導国上層部は、魔導国発展の最大の功労者であるアーカイアスとともに、真実そのものを闇に葬ることを決断する。

魔導国上層部は、隷属魔法によって縛られ、暗殺者として育てられた少女リリィを差し向ける。ARCANAをはじめとする眷属たちの護衛を突破してルーメを殺害したリリィは、その姿を借りてアーカイアスへ接近する。

しかしアーカイアスは、目の前の少女がルーメではないことを見抜く。同時に、その少女自身も魔導国によって隷属させられた被害者であることに気付いてしまう。アーカイアスは娘を持つ父親として、リリィを暗殺者ではなく一人の子供として受け止め、そのまま彼女の手によって殺害される。

第一魔塔は焼失し、発見された亡骸から魔導国はアーカイアスとルーメの双方が火災によって死亡したと発表した。

リリィとヴェスパー

アーカイアスの暗殺を果たしたリリィは、隷属魔法によって命令に逆らえない状態に置かれており、任務達成後にはルーメとして自死するところまで命じられていた。

リリィが第一魔塔に火を放ち、最後に自らの心臓へ刃を突き立てた時、殺したはずのルーメがその前に姿を現す。ルーメは初めから暗殺者が差し向けられることを予期しており、あらかじめ《代理構成体》と入れ替わることで生存していた。

ルーメは、リリィが無関係な被害者のまま死へ逃れることを許さず、死の間際に「ここで死ぬか、自分の側で生きて償い続けるか」という選択肢を与える。本来なら得ることのできなかった贖罪の機会を与えられたリリィは後者を選び、ルーメはその亡骸から魂を回収してARCANA規格の身体へ移し、新たにARCANA-VII《ヴェスパー》の名を与える。

無限の時を生きるルーメの側で、生涯をかけて贖い続けるというその契約は、ルーメとヴェスパーだけが知る、二人だけの特別な絆となる。

七人のARCANA

セレスとリュカはアーカイアス暗殺以前に作られており、暗殺後に正式なARCANAとして姉妹に加わった。本来予定されていたARCANAは六人姉妹だったが、ルーメが暗殺者リリィの魂にARCANA規格の身体とヴェスパーの名を与えたことで、エリュシア、ノイン、カエラ、オルカを含むARCANAは七人姉妹となった。

この時代のARCANAは、護衛、資金管理、安全設計、現場対応、記録、共鳴状態の調整、表に出せない特殊任務をそれぞれ分担し、ルーメの研究と革命準備を支える七人の娘であり、最も近しい側近でもある。

ノクティルカ革命

アーカイアスの死後、ルーメは魔法文明そのものの存続ではなく、大陸の崩壊を阻止することを最優先とする方向へ舵を切る。表社会から姿を消したルーメは、《ノクティルカ》という新たな名と《代理構成体》を用い、周辺国のレジスタンスを支援しながら、魔導国の外側から革命運動を開始する。

ノクティルカは、黒いヴェールで目元を隠した喪服姿の少女として活動する。魔導国側からは、反逆者へ悪魔の技術を与え、魔法文明を破壊しようとする《裏切りの魔女》として扱われた。一方、マナ枯渇の深刻な影響を受ける周辺国をはじめ、長く魔導国の支配に苦しんできた側からは、真実を暴いた救済者として見られ、後世には《救済の聖女》と呼ぶ伝承も残されている。

やがて各地のレジスタンスは革命軍として結集する。革命軍は、ノクティルカが与えた《マナ励起阻害装置》、マナに依存しない動力機関《レゾナ機関》、そしてレゾナ機関で駆動する強化外骨格《リベルタス・フレーム》など、魔法を封じた状態でも戦える装備を用いることで、生身の魔法使いを主力とする魔導国軍の優位を崩していく。こうして革命軍は勢力を急速に拡大し、破竹の勢いで首都へと迫っていった。

三種類の文書による情報公開

ルーメは、魔導国上層部が隠蔽しようとした文明破局の情報を、異なる立場の人々へ届けるため、三つの文書として公開した。

**《アーカイアス論文》**は、アーカイアス本人が残した研究成果として、《メガリス・コーン理論》、アブストラクターによるマナの過剰抽出、《不可逆的沈降係数》などを学術界へ提示する文書である。

**《ミネルヴァ注釈》**は、研究者や技術者が実際に状況を検証し、危険な設備を停止できるよう、観測手順、危険区域の推定、設備の停止手順などをまとめた技術文書である。公開後、ミネルヴァ・ギアハートは公には「真実を公表しようとして暗殺された発明家」として記録され、二度と表舞台に姿を見せることはなかった。

**《ノクティルカ声明》**は、属国、周辺諸国、地方都市、反魔塔勢力、魔導国市民へ向け、魔導国中枢が大陸崩壊の危険を把握しながら隠蔽していることを、政治的な言葉で告発する文書である。

同じ問題を、学術界向け、技術者向け、市民や周辺諸国向けという三つの異なる形で公開したことで、隠蔽されていた危機は魔塔の外へも広く知られるようになる。これを契機に各地の反発と抵抗運動はさらに拡大し、やがて大陸全体を巻き込む革命へと発展していく。

D2計画

D2計画――Deep Dormancy Plan/深層休眠計画は、深層メガリスへ楔を打ち込んで崩壊を食い止めると同時に、星規模でマナ励起を阻害し、魔法活動そのものを長期間休眠させる計画である。

《メガリス・コーン》現象による大陸崩壊を止めるためには、アブストラクターによるマナの汲み上げを停止するだけでは不十分だった。地表で行われるあらゆる魔法活動を停止させ、数千年という時間をかけて、深層メガリスのマナが自然回復するまで待つ必要があった。

D2計画は、始源機《アイオーン》、位相中和装置《ニュートラライザー》、広域位相中和装置群《ソムニア》、共鳴制御装置《ハルモニア》、そしてノクティルカの歌を連動させることで実行される。ノクティルカの歌は、各装置を同期させ、共鳴制御を行うための基準信号として用いられる。

この出来事は後世に、「歌う黒衣の少女が世界を眠らせた」という伝承として残されていく。

最終局面

革命の最終局面で、魔導国は禁忌兵器であるメガリス・アーマメント《カンパネラ》を使用する。都市インフラと深層メガリスを強制的に兵器へ転用したことで《不可逆的沈降係数》は急激に悪化し、《メガリス・コーン》現象が発生。ついに、ルーメが恐れていた深層メガリスの連鎖崩壊が始まる。

魔導国の英雄であるステラもろともノクティルカを消し去ろうとする《カンパネラ》の火に対し、ノクティルカはこの世界最初のロボットとして開発した始源機《アイオーン》と位相中和装置《ニュートラライザー》を用い、その攻撃を無力化する。

その後、広域位相中和装置群《ソムニア》を世界各地へ展開する。ノクティルカの歌を基準信号として、リュカが共鳴制御装置《ハルモニア》を用い、地域ごとの出力差、地脈による遅延、マナ励起状態を調整。《ソムニア》を深層メガリスへ楔として打ち込むと同時に、地表のマナ励起を阻害し、魔法活動を長期間の休眠状態へ移行させる。

その過程で、ノクティルカとなったルーメはステラと再び向き合う。ステラは、重大な決断ほど一人で抱え込むルーメの癖を見抜き、それでも行くのかと問いかける。ルーメは「眠らせてくる」と答え、自らの選択としてD2計画を最後まで実行する。

D2計画によって大陸の崩壊は食い止められる。しかし、都市、軍事、生活、通信、移動、工業のすべてをマナに依存していた魔導国は文明を支える基盤を失い、これによって魔法文明そのものが終焉を迎える。

D2計画後

ルーメは、D2計画実行後に生じる社会崩壊を最小限に食い止めるため、マナに依存しない動力機関《レゾナ機関》をはじめ、生活の再興に必要な物資や食料、それらを運ぶための輸送手段などを事前に残していた。

ステラとベルには、レゾナドライブで駆動する《ヴァルグラン・ルミナリス》を託す。これは、魔法を失った世界でも二人が救助や復興を続けられるように用意した、ルーメから親友たちへの最後の贈り物だった。

ステラは《ヴァルグラン・ルミナリス》を救助、避難民の保護、瓦礫の撤去、治安維持などに用い、ベルは機体と残された技術を解析し、照明、輸送、医療、動力などの生活基盤へ応用していく。こうして《ヴァルグラン》は、魔法が成立しない戦場で敵を倒すための機体から、魔法を失った世界で人々を助けるための機体へと、その役割を変えていく。

またルーメは、事前に眷属たちを動かし、マナを生存条件とする霊的種族や魔物を、自らの空間魔法によって作り出した疑似マナ環境へ退避させていた。さらに、魔法文明の知識を将来へ残すため、魔導国の研究者や魔法使いの一部も保護し、安全な場所へ退避させている。

クロノ・シアターと次元回廊

ルーメの本来の身体は、時間断層と次元回廊の先に築かれた《クロノ・シアター》に置かれている。幼少期に作られた小さな研究室は、数千年の歳月を経て、研究開発、ロボットや宇宙戦艦の建造、外宇宙や異界境界の監視、ロボット作品の鑑賞までを行う大規模拠点へと発展した。

《クロノ・シアター》は研究所であると同時に、ルーメの私室、観測室、劇場、避難所、そして私的な鑑賞空間でもある。内部には、セレスが記録した第一魔塔での日々や、失った人々との思い出も保存されている。

次元回廊は、《クロノ・シアター》と外界、第零外郭艦隊、異界境界、各種拠点を結ぶ通路群である。ルーメが外界で活動する際には《代理構成体》を用いており、数千年にわたって本来の身体のまま外の世界へ出たことは一度もない。

またルーメは、《代理構成体》へ《精神憑依》する際、自身が持つ記憶や情報の一部を意図的に制限し、未来の出来事や相手の正体を知らない、当事者に近い状態で外界へ出ることがある。その主な目的は、自分の知らない出来事や物語を、可能な限り当事者に近い立場から体験することにある。

独立共同体エルセナード

独立共同体エルセナードは、ルーメを中心として、ARCANA、SOCIA、第零信託機構、第零外郭艦隊、エイドロン・ユニットなどによって形成された、非国家的な文明圏である。

ルーメは第零信託機構を通じて、五大企業や八洲帝国連邦へ資金、技術、物資を提供している。こうした支援は、大規模な社会崩壊を防ぐ必要がある場合を中心に行われる。

項目 内容
主な創造物・計画 ARCANA、D2計画、第零外郭艦隊、クロノ・シアター
活動内容 外宇宙、異界境界、次元空間などから到来する脅威を監視し、防衛線や退避路を維持する文明の守護者

ARCANAとの関係

ルーメの眷属である七人のARCANAは、ルーメの娘であり、部下であり、守護者であり、記録者でもある。ルーメ一人では抱えきれない役割や責任を、それぞれの専門分野に応じて分担する存在である。

ルーメはARCANAに大きな裁量と自由を与えており、ARCANAもルーメの嗜好や願望を深く理解し、細かな命令を受けなくても、資金管理、研究環境の維持、安全管理、記録、外宇宙や異界境界の防衛などを自律的に行っている。

そのため、ルーメのロボット研究、開発、鑑賞といった活動は、数千年にわたりARCANAの支援によって支えられている。

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